角田光代原作の「愛がなんだ」は2019年4月に公開された恋愛映画です。
アラサー女性の痛々しいほどにまっすぐな片思いを描いた今作は恋をしたことのある方なら誰でも共感してしまう作品だと思います。
あなたには一目惚れの経験がありますか?
何もかもを投げ打って尽くしてしまう主人公の姿に涙や共感を覚えてしまいますよ。
監督は「パンとバスと2度目の初恋」、「アイネクライネナハトムジーク」を手がけた今泉力哉です。
絶妙な恋愛描写に定評のある彼はほぼ毎年映画を公開しており、2020年には「his」、「mellow」を公開予定です。
どこか恋に疲れてしまった大人に送りたい「愛がなんだ」を、今回はネタバレ込みのあらすじ、結末、感想と共にご紹介していきます。
ネタバレあらすじ
OLとして働き気づけば28歳を迎えた山田テルコは片思いに身を焦がしていました。
5ヶ月前に出会った田中マモルに一目惚れしたテルコは世界がバラ色になったような幸福感を得ました。
2人の関係はまだ友達以上恋人未満。体の関係を持ってしまったけれど交際には至っていません。
しかしテルコは好意を全面的にアピールしており、仕事中でも呼び出されたなら早退してでも会いに行き、夜を共に過ごし朝まで必要なら仕事を遅刻してでも一緒にいる時間を作りました。
テルコにとってマモルは世界一大切な存在であり、もう他のことなどどうでもよかったのです。
仕事への責任感のなさから同僚や上司に疎まれるようになり、友人との約束も守らなくなったテルコ。
そして風邪をひいたマモルから電話を受けたテルコはすぐにマモルの自宅へ向かいご飯を作り世話をしました。
マモルからそろそろ帰るように促されトボトボと帰るテルコ。それでもマモルが大事なので決して嫌いになったりしません。
テルコの唯一の親友・葉子はテルコのあまりにも都合の良い使われっぷりに心底心配をしていました。
しかし葉子自身は彼氏であるナカハラをマモルと同じように都合よく呼び出しては使っている、という人物です。
ナカハラはテルコの姿に深く共感を覚え、切なくなります。
テルコは会社をクビになりましたが、自由にマモルと会えることの嬉しさから全くとして気にしていません。
しかし次第にマモルはテルコに対して冷たく当たるようになり、テルちゃんと愛らしく呼んでいたのが田中さん、と他人行儀なものになっていきました。
そしてついにマモルからの連絡が途絶えてしまいます。
テルコは諦めることにし、再就職のため動き始めました。
しかし唐突に来たマモルからの電話に飛び上がるようにして喜びすぐにマモルの自宅へ向かってしまいます。
久しく会っていなかったマモルはしかし、やさぐれた女性・すみれと一緒にいました。
そこでテルコは、このすみれという女性のことをマモルは好きなのだとすぐに感じ取ります。
突如やってきたライバルの存在に苛立つテルコでしたが、マモルの手前変なことはできません。
すみれはというとテルコの存在をとても気に入り、その後何度も飲みに誘うほどになりました。
なぜかテルコはこの後再びマモルと体の関係を持つようになり奇妙な三角関係が出来上がります。
そしてマモルが突然テルコの家を訪れ、関係の解消を口にしますが……。
ラストの結末は?
マモルはすみれが好きであることを理由にテルコとの曖昧な関係を解消したいと言いました。
マモルのことが好きでたまらないテルコでしたが、その言葉を聞いてマモルのことはもう好きじゃないと言います。本音とは全く逆の発言です。
それを聞いたマモルは安堵した表情を浮かべます。
テルコにはここで自分の恋愛感情を押し通すよりも、すみれとの恋を応援することでマモルと繋がり続けるという考えがあったのです。
恋や愛を超越した感情をマモルに抱いていることを知ったテルコは、マモルと会い続けることのできる未来を選択したのでした。
感想
田中テルコを演じた岸井ゆきとナカハラを演じた若葉竜也の2人がなんとも切なかったです。
報われない恋をしながらそれを諦めることなどできず、ほとんど犬のように待ち続けている姿は痛々しくもどこか共感してしまう虚しさがありました。
ラストの結末は恋愛としてはバッドエンドです。これから先も報われることはないわけでしょう。
映画の雰囲気としてはほんわかとしており、最後も暗くなりすぎずテルコの明るい表情もあり心地よく映画は幕を閉じます。
しかしこれがまた苦しい、とも感じました。
観終わった後にもじっくりと考えさせられてしまうような後味です。
映画を見ながら、あーこんなことあるよね、とじんわり噛みしめるような、そんな不思議な恋愛映画でした。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
テルコのまっすぐで全力の片思いは観ているものの心を打ちます。
マモルやすみれ、ナカハラや葉子といったキャラクターの誰かしらに自分を投影してしまうことだと思います。
「愛なんだ」は愛とは一体何なのか?を問うているような印象に残る映画です。
特に恋愛に疲れてしまった大人の方にはおすすめしたい作品となっております。
ぜひチェックしてみてくださいね。